マリーンの風 イチローイズム吸収
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ただ、今江自身にとってはもっと重要で、胸躍る出来事が待っていた。それはイチロー外野手がチームメートとなり、共に戦うということ。彼にとってイチローはかつて雲の上の世界の人だった。94年、イチローがオリックスで200本安打を達成したとき、今江は小学4年生。躍動する振り子打法の姿をあこがれのまなざしで見ていた。まさにイチローを見て育った世代だ。
「ボクにとってイチローさんは本当のスーパーヒーロー。打撃フォームをまね、床屋で『イチロー選手の髪形にしてください』と注文したこともあった。子どもの頃からのあこがれの人と一緒にプレーできるなんて夢にも思わなかった」
そんな人物と同じロッカールームで着替え、一緒のフィールドで練習をし、プレーする。今江にとってまさに夢のような日々が始まった。
「とにかく疑問に思っていたことはすべて聞きました。せっかくの機会ですから。毎日、何らかの質問をしていますね」
ロッカールームにはいつもイチローの話に目を輝かせながら聴き入る今江の姿がある。また、そんな若者をイチローもまた可愛がっているように見える。WBC2次予選直前に行われたアリゾナ合宿中には自宅に招待し、夕食を共にしたこともあった。
「プロとは何か? プロとしての心構え、気持ちの持ち方。ファンとの接し方。いろいろなことを教わった。今回のことは大事に日本へ持ち帰ろうと思っています」
WBCでは試合出場機会が少なくロッテファンの皆さんは残念な思いをしているに違いない。しかし本人にとっては得るものが多い大会だ。米国という異国での野球。そして超一流の選手と接して学びとったことはきっと今季、様々な場所で生かされるはず。イチローイズムを吸収し、また一つプロフェッショナルの階段を上った背番号「8」。その姿にぜひ注目して欲しい。
(千葉ロッテマリーンズチーム付き広報 梶原紀章)
今江はやれるコ。