マリーンの風 尊敬する父に認められ
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「私のお父さんは大工の仕事をしていました。家を造る仕事をしていたのです。私にとっては子供の時から尊敬する存在で、いつかはお父さんに認められる人間になりたいと思っていました」
そして、こんな昔話を披露してくれた。それはニューヨークメッツの監督を辞めた直後の03年のこと。長いこと野球に携わってきた監督にとって、この時は唯一の空白といえるような期間だった。評論家の仕事はあったものの比較的、自分の時間が持てた唯一の時。そんな時に、ふとある計画を思いついた。
「子供のときから父の仕事にも興味があって勉強もしていた。だから造ったことはなかったけど、家を造るノウハウを持っていたつもり。父親を驚かして、認めてもらおうとこっそりと家を造ることを決めたのだよ」
材料を買い込み、持ち運び、自宅の庭があるスペースに大きな小屋を建て始めた。それは2カ月にもわたる作業だった。木を削り、柱を建て、すべてが自家製。監督1人で小屋を造り上げた。そして、くぎをあと一つ刺せばすべて完成という段階であえて作業を終え、父親を自宅に招いた。
そして父親に言った。「もし、私がやった仕事を認めてくれるのなら、最後の作業はお父さんの手で行ってください」。父親は誇らしげに、そしてうれしそうに力いっぱいくぎを打ち込み、立派な小屋が完成した。
「あの時、お父さんが見せてくれたうれしそうな顔は忘れられない」
懐かしそうに振り返るその顔は、このときばかりは子供の顔に戻っていた。親子の関係。最近は胸の痛むニュースが多い。子供が親を尊敬し、親は子供に愛情のすべてを注ぐ。そんな当然の親子関係が薄れているように感じられてならない。監督にとっては親子の関係が今も貴重な財産となり、生きる支えとなっている。こんな社会だからこそ、親子の関係の大切さをロッテの指揮官という立場から今後、伝えていきたい。監督は切にそう願っている。
(千葉ロッテマリーンズチーム付き広報 梶原紀章)
さすが広報梶原。いいネタ持ってんなー。