マリーンの風 選手変えた少年との出会い
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「野球のことで、めちゃくちゃ落ち込んでいた時期。そんな時に、たまたま、あるテレビ番組を見て、ハッとさせられた」
思い通りのプレーが出来ないことにフラストレーションはピークに達していた。そんなもんもんとした思いの中、なにげなくホテルの自室で見たテレビ番組。それは、宮城県に住むある10歳の少年に関する特集番組だった。彼は200万人に1人の発症率といわれる難病の進行性骨化性線維異形成症(FOP)と闘っていた。筋肉や細胞が骨になってしまう難病で、現状では明確な治療法は見つかっていない。しかし、少年は病気としっかりと向かい合い、日々を前向きに生きていた。画面を通して見た10歳の少年の懸命に生きる姿に、自然と涙がこみ上げてきた。そして、ふがいない自分を悔いた。
「本当に自然と泣きそうになった。彼に比べてオレってなんて小さいのだと。野球で打てないぐらいでクヨクヨしている。世の中には難病と向き合いながら、しっかりと生きている人もいるのに、好きな野球を職業としながら、悩んでいる自分が馬鹿馬鹿しく思えた」
偶然に見たテレビ番組を機に、西岡は悩むのをやめた。そして、不思議と打率も少しずつ上昇し始めた。今ではプロ入り以来、最高の状態にある。
西岡は7月14日のソフトバンク戦(千葉)に少年とその家族合わせて4人を球場に招待している。旅費や宿泊費は、西岡が負担した。それはキッカケを与えてくれた少年への感謝の気持ちによるものだった。
「きょうはありがとうと言いたかった。勇気を与える仕事をしているはずのオレが反対に勇気をもらった。そして、それを機に調子もよくなった。それを伝えたかった。ありがとうって感謝をしたかった」
残念ながら試合は雨天中止となったが一塁側ベンチにて、しばし談笑。少年の要望からキャッチボールを楽しんだ。2人だけの会話。2人だけの時間が流れた。
「なにかの縁でこうやって会えたのだから、これで終わりにしたくない。ずっと付き合っていこうな」
そう約束して別れた。それから数日後。少年が西岡と出会った夜、プレゼントされたバットを大切そうに抱きながら眠りについたとの手紙をちょうだいした。それを伝え聞いた西岡はうれしそうに笑った。少年と西岡の交流はこれからも続く。少年は難病と闘いながらも一生懸命に生きていく。西岡も負けてはいられない。
いい話だけど、西岡ってところが胡散臭い…。まあいいけど。