「風と友達」渡辺俊 5回以降完全
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雨にも負けず風にも負けず。サブマリンの力投で、ロッテが第2ステージ進出に王手をかけた。ロッテの渡辺俊介投手(31)が8日のソフトバンク戦で5安打4失点完投。最大瞬間風速12メートルの突風と雨を味方に、5回以降は無安打無走者に抑えると、打線も8得点と援護した。9日の第2戦で勝つか引き分ければ、リーグ規定により13日から始まる日本ハムとの第2ステージ(札幌ドーム)進出が決まる。
秋の気配を漂わせる冷たい風が心地よかった。05年に続くポストシーズン開幕投手の大役を果たす完投勝利。お立ち台で渡辺俊の声が弾んだ。
「自分のミスで失点が重なって、追いついてもらって…。これで抑えなきゃ、ピッチャーじゃない。雨と風を味方につけていいピッチングができました。(好投の要因は)風と友達になれたことです」
試合前から降り続く雨に加え、強風との戦い。フォームが微妙に崩れた序盤は苦心の投球が続いた。3回に自らの失策から3点を献上。4回にも1点を失った。それでも打線が劣勢をはね返す。初めてリードを奪った5回からは渡辺俊の真骨頂だった。
「すべてのボールが風になじんできた。風を利用できて、思うように投げられるようになった」。中堅方向から強く吹きつける千葉マリン特有の海風はバックネットにはね返り、本格派投手にとってアゲンストとなる。その強風と3万観衆の後押しを受けた渡辺俊の直球は逆に浮き上がり、宝刀シンカーはブレーキ鋭くソフトバンク打線を牛耳っていった。後半5イニングは無安打無走者。「風に負けないフォームで投げたから3倍疲れました」とおどける背番号31に、女房役の里崎は「風をつかんだ俊介に、風をつかめなかった(斉藤)和巳、その差でしょう」と目を細めた。
ポストシーズンに限れば、自身は05年アジアシリーズ決勝を含め登板した5戦とも負けなし。どんな状況にも動じない精神力の強さがある。決戦前日の7日午前中は長男の幼稚園の運動会に足を運んでリフレッシュ。自宅では今年から飼育する熱帯魚を眺めて心を静めた。今季はシーズン前半戦で5試合連続雨にたたられ、レギュラーシーズン最後の登板となった9月30日の日本ハム戦も大雨の中、1失点完投。“水を得た魚”のように雨が絡んだ登板ではチームは7戦全勝だ。
バレンタイン監督が「王者らしい投球をしてくれた」と称える“巧投”で、チームはレギュラーシーズンからソフトバンク戦6連勝。今季9勝の久保も待機させた救援陣を休ませ、第1ステージ突破に王手をかけた。9日は引き分けでも第2ステージ進出が決まる。「この勢いでいってくれれば大丈夫」。05年も先陣を切り、日本一まで導いた渡辺俊は叫んだ。今年も頂点への追い風が千葉から吹いている。
俊介は完全に役割を果たしたな。素晴らしいね。