マリーンの風 「5人家族」強いきずな
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「なんで、球場に来ているんだよ。きょうは来ないはずなのに……。どうして、来たんだろう」
家族を大切にしている小野が家族を球場に招待するのは決して、珍しい光景ではない。それが、この驚きの様子。そして亜紀子夫人(32)、長男の祐介くん(7)、長女の馨子ちゃん(4)の雰囲気もいつもとはなにか違っていた。
「実は妻が妊娠していたんだ。でも、残念ながら流産という悲しい結果になってしまった。そんな時期の直後だっただけに、球場に来るとは思っていなかった。正直、驚いた」
後日、小野はその日のことをそう告白してくれた。夫人も最初は自宅で安静にしていた。しかし、2回に打線が7点を奪い、夫が勝利する確率が高くなるともう我慢が出来なくなったという。
「パパがお立ち台に上がるかもしれないから、見に行こうか」。夫人の一言に子供たちが賛同。都内の自宅から急きょ駆けつけ、なんとか最後のお立ち台に間に合った。
「パパ、おめでとう」。子供たちはいつも以上に大きな声で父親の元に駆け寄った。家族にしか分からない深い悲しみを乗り越えてのお立ち台。強いきずなで結ばれている家族の姿がそこにはあった。
「家族は守るべきものであり、支えであり、自分が力を出す原動力」と話す小野。先発したこの日も、午前中、夫人の通院に付き添ってからの球場入りだった。前日も、そしてその前の日も、ずっと家族の面倒を見てから球場に姿を見せた。時には、試合後、疲れた体のまま、夫人の代わりに子供たちの面倒を見たこともあった。
しかし、一度ユニホームを着ると泣き言は一切、言わなかった。だから、チームメートは誰一人として、小野の苦悩を知るものはいなかった。夫として、一家の長として家族を守りながら、黙々と仕事をこなした。
小野の自身のブログ(http://www.ono-shingo.net/)には亜紀子夫人のメッセージが公開されている。
「結果だけを見たら流産という悲しい出来事だけど、(中略)家族としても夫婦としても、ベビーちゃんのおかげで意味のある時間を過ごせたのではないかと思っています。姿は見えないけど、我が家は5人家族になりました」
6勝目のお立ち台は、特別なものとなった。そして、この日を境に小野家は、またさらに強いきずなで結ばれた家族となった。
小野には守るべきものがある。だから、打者の胸元をえぐるような強烈なシュートボールを投げることが出来る。勝利を心の底から喜んでくれる家族がいるから、逆境にも耐えられる。これからも家族全員で手をつなぎながら、仲良く生きていく。
なんか、そういうのまで公開しちゃうのはどうなんだろうね?