ロッテ:六回に一挙4点、成瀬は完封勝ち SBは拙攻響く
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ロッテがワンチャンスを生かした。六回、四球の西岡がすかさず盗塁。走者を気にするスタンドリッジから続く2人も四球を選んで1死満塁とし、サブローの走者一掃の三塁打と、里崎のスクイズで4点を奪った。成瀬は制球、変化球のきれともに抜群で、5安打無四球で完封した。ソフトバンクは前半のバント失敗や2併殺打が響き、投手交代も遅れた。
▽ロッテ・バレンタイン監督 四球をよく選んだ。見極める訓練をしている選手、ということだ。(スクイズは)4点目が非常に大きな得点になると思ったからだ。
▽ソフトバンク・王監督 結果的に成瀬を打てなかった、ということ。走者を出したが、得点圏になかなか進められなかった。捕まえるべきところで捕まえられなかった。
▽ロッテ・サブロー (六回、走者一掃の三塁打)このプレッシャーを楽しんで、ヒットを打ってやろうと思った。(5安打完封した成瀬の投球に)たいしたもんです。彼がMVPだと思う。
◇21歳の成瀬が完封劇…今季、防御率と勝率で2冠
1勝1敗で迎えた決戦の舞台。ロッテ・バレンタイン監督が先発として選んだのは、今季、防御率と勝率で2冠に輝いた成瀬だ。
だが現在、チームで最も安定感があることは確かでも、1軍でフル稼働したのは今季が初めてで大舞台は未経験。しかし成瀬は「プレッシャーがかかる場面だけどやってやろうという気持ちはあります」。その言葉通りの好投だった。
一回、先頭の川崎に安打を許すが焦らない。犠打で送ろうとする本多を捕飛に仕留めると「初めての対戦で楽しみ」と言っていた松中を3球三振。続く小久保もチェンジアップで空振り三振に抑えると、前夜の完敗で沈んでいたチームのムードがぐっと盛り上がった。
だが、その好投に打線がなかなか応えられない。でも成瀬はじれなかった。130キロ台後半の直球とスライダー、チェンジアップを捕手・里崎の構えるところに淡々と投げ込んで、スコアボードにゼロを並べ続ける。
そして六回。4点の援護を得てもペースは乱れない。直後の七回2死から小久保に二塁打を許し、初めて二塁に走者を背負ったが、続く大村は、落ち着いて三ゴロに仕留めた。
「今年は成長したところがいっぱいあって……」と話す21歳の左腕。この日も「大舞台でも動じずベストピッチングをする」という、レギュラーシーズンでは得られない短期決戦ならではの劇的な進歩ぶりを見せた。
◇スタンドリッジ、力投も報われず
ソフトバンクのスタンドリッジが防御率、勝率とリーグ2冠の成瀬と互角の我慢比べを演じた。力及ばなかったが、表情は最後までゆがまなかった。心臓の強さを示すに十分の101球だった。
西岡を直球一本で押して見逃し三振に仕留めての発進。守備の乱れで併殺が取れなくても、味方打線が拙攻で好機の芽を自ら摘んでも、ぶれない。恐れず内角を突き、注意深く低めに集める。先頭打者を一度も許さず、五回までは二塁すら踏ませなかった。
成瀬が変幻自在の「柔」なら球威で押す投球は「剛」と映り、193センチ、100キロのその体がまた一層、大きく見えた。
それだけに、六回がなおのこと悔やまれる。1死から球が乱れ始め、3連続四球。サブローに147キロの直球を右中間に運ばれ、3人が相次ぎ生還。5回3分の1、4失点で、救世主にはなれなかった。
今季、藤岡、柳瀬と救援右腕が春先から不調だったため6月に途中入団。救援で初登板した中日戦では1イニングを投げただけでチームの逆転を呼び、初勝利を挙げる運があった。駒不足で8月に先発転向した後も8戦6勝(1敗)。安打を浴びてもリズムを崩さず、我慢続けて投げるから、勝ち星が連なった。
その強心臓と強運を持ち合わせた右腕に王監督は、本来なら和田や新垣が担うべき勝負の第3戦を託した。その期待には十分応えたと言っていい。
○…三塁へ滑り込んだサブローは右こぶしを2度振って喜びを表した。六回、1死満塁から放った先制打は、走者一掃の右中間三塁打。「絶対に打ってやろうと思って、打席に入った」という強い気持ちと、レギュラーシーズン2位の「俺たちは、ここで負けるわけにはいかない」とのプライドもあった。
昨季は打撃不振に悩み、オフには視力回復手術を受けた。勝負の年と臨んだ今季、6月には9打数連続安打の球団新記録を打ち立てるなど活躍し4番の座を取り返した。「成瀬が好投しているのに見殺しにはできない」。中軸としての自負が結果に結びつけた。
○…ソフトバンクのスタンドリッジが六回に四球から崩れた。それまで二塁を踏ませない投手戦を演じていたが、六回1死後に西岡を歩かせて、盗塁を許したところから制球がおかしくなった。
早川、福浦とも追い込みながら、勝負しきれずに歩かせて満塁。「大事な試合で絶対にやってはいけないことをしてしまった」。動揺は投球にも表れ、サブローに甘く入ったストレートを右中間に弾き返された。
新垣、和田、ガトームソンという先発の柱の不調や故障で3戦目を任され、立ち上がりから飛ばして五回まで2安打。しかし、先発転向後は7回が最長。緊迫した試合で限界が早く訪れ、「ロッテに負けたというより自分に負けた」と悔しさをかみしめた。
早川も福浦もよくつないだよ。マジでロッテらしい野球だった。