正統派サブマリンがプロ野球の世界に挑む 千葉ロッテ大社ドラフト5巡目・下敷領悠太
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千葉ロッテの渡辺俊介は日本球界を代表するサブマリン(下手投げ)。近年、高校・大学・社会人野球などでも下手投げにモデルチェンジする投手が増えているのは、渡辺の影響が大きいだろう。その渡辺が在籍する千葉ロッテに新入団する“正統派サブマリン”がいる。それが大学・社会人ドラフト5巡目で指名された日本生命の下敷領悠太だ。
下敷領は3歳上の兄の影響を受けて、小学3年生で野球を始めた。そのころから高い身体能力を認められて投手を任せられることが多く、中学生で入団した大阪鶴見シニアでも遊撃手と投手を兼任した。この当時はスリークォーター気味だったが、やや制球に難があった。中学2年生の時、指導者にサイドスローを勧められ、さらに後にユニホームを着ることになる日本生命の野球教室でもサイドスローの方がいいと言われて、下敷領は腕を下げることに。そして、中学3年生の時、全国大会でベスト8までコマを進めたのだ。
上宮高では、国木剛太(元広島)や金村大裕(大商大-阪神)ら同級生のライバルと切磋琢磨。下敷領は打力も買われていたので、一塁手兼任投手の準エース格の扱いであったが、当然、投手としての意地があった。そこで「ほかとは違うことをせなアカン」と、横手投げから徐々に腕が下がり、下手投げになった。
「だから、いつから下手投げという線は引けないし、誰かをまねした訳でもないんです」
下敷領はそのように自身のフォーム変遷の歴史を振り変える。
大きく成長させた社会人
法大時代では4年秋にベストナインを獲得するなどプロからも注目された下敷領だったが、社会人野球を経験したことが大きなプラスとなった。まずはチームワークの重要性。日本生命は歴史と実績のある名門チームだが、在籍する選手やスタッフにおごりは一切ない。試合に出ていない選手も自身の役割を認識して懸命にチームをサポートする。そして、それができるからこそ必要とされた時にグラウンドで力を発揮する。これがチームワークだということを下敷領は肌で感じた。それだけに日本生命を離れるに当たり、「みんなにがんばってもらいたいのは当然ですけど、特に同期入社の18番(背番号)にはがんばってもらわんと。いや、絶対に大活躍できるんやから」と、仲の良かった同ポジションの下野輝章へ熱いエールを送ることを忘れない。
また、社会人野球の世界では年齢が上の選手が圧倒的に多い。大学時代のころでは考えられないことであり、礼儀が重んじられる。都市対抗の補強選手という制度では、他チームの年齢が上の主力選手とも接する機会に恵まれ、下敷領は10歳上の捕手・味園博和(デュプロ)と巡り合った。
「自分は味園さんの洗濯係をやっていたんです。正直、最初はコワモテで恐くて(苦笑)。こっそり洗濯物を取りに行ったりしていたけど、他チームから見た自分のイメージなんかを捕手の目線で話してくれました。実際、バッテリーを組むことも多かったし、そこで自由に投げさせてくれましたね。それで足りへん部分を味園さんの豊富な経験でたくさんフォローしてくれていたのもマウンドで分かりましたし、ホンマに勉強になりました」
社会人2年目のことしは春先にフォーム修正で苦しんだが、このような交流を糧に、自分の力でかべを乗り越え、名門の主戦投手の座をつかんでいった。
「そういう経験があるから社会人から入るのは強みやと思っています。高校や大学から入っていたら、そういうところが分からないことが多いでしょう」
先発で自分の持ち味を発揮
これから飛び込むプロ野球の世界。前述した国木、金村と高校時代の同級生が先にプロ入りしているので、その厳しさは十分に承知している。ただ、「そこは小さいころからの憧れの舞台。ビビっている場合と違う」と、社会人出身ルーキーらしく“即戦力”を目標に掲げる。
「俊介さん(渡辺俊)という良きお手本があるので、それを吸収したい。ただ、俊介さんのコピーである必要はないと言われていますし、自分もそのつもりです。ポジションに関しては基本的に大学、社会人と先発だったので、先発したいという気持ちは強い。自分は1イニングをピシャリと抑えるタイプではない。長いイニングをノラリクラリと投げて打たれても単打ならOKで、結果的に最少失点というタイプ。俊介さんのように100キロを割るようなボールはないですが、緩急と高低、左右、前後のコントロールが持ち味ですから」
自分の持ち味をしっかりと理解し、先発をアピール。ドラフトでの指名順位こそ下位だったが、それは他球団との駆け引きもあり、単純な評価ではない。地に足を付けた大人の自覚と、地をはうサブマリン独特の球筋で、プロ野球の猛者たちをきっと翻ろうしてくれるであろう。
■下敷領悠太/Yuuta Shimoshikiryo
1983年5月4日生まれ、大阪府出身。上宮高-法大-日本生命。184センチ、75キロ。右投右打。B型。小学3年生の時に神路バッファローズ(軟式)で野球を始める。相生中では大阪鶴見シニアへ入り、3年夏の全国大会でベスト8に進出した。上宮高では2年春の府大会優勝など常に大会上位へ進むも、甲子園出場はなし。法大4年秋は6勝を挙げてベストナインを獲得し、リーグ優勝の立役者となった。日本生命では入社1年目の春に行われたJABA京都大会で完封勝利を挙げるなど、1年目から先発投手として活躍。2006年の日本選手権では準優勝に貢献し、大会敢闘賞を獲得した。球速はアベレージで130キロ前後だが、多彩な変化球とストライクゾーンを立体的に使って打者を手玉に取る投球が持ち味
頑張れ、下敷領。