マリーンの風 五輪予選、藤川投手に心酔
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阪神タイガースの抑え投手・藤川球児(27)の元に、ロビーで選手が出て来るのを待っていたファンの親子がサインを求めてきた。時間は夜の10時をまわったぐらいだった。少しの沈黙を置いて、藤川は静かに話し出した。
「同じように子どもを持つ親としてあえて言わせてください。ボクはこんな遅い時間まで子どもを連れて、サインをもらおうと待つ事に疑問を感じます。余計な事かもしれませんが、ボクはそう思います。サインはしますが、今のボクの考えはそうです」
突然の意見に、最初はキョトンと驚いた表情をしていたファンの父親は、サインをもらうとそそくさと去っていった。
プロ野球選手であるが、3人の子どもの父親でもある藤川。彼は父親である立場から夜遅くまでホテルで小さな子どもを連れて、選手のサイン待ちをする親の行動に疑問を感じ、それを素直に口にした。その時、近くにいた私は、この藤川の勇気ある行為に驚いた。
立場上、ファンの方に、意見することは決して、簡単なことではない。一歩間違えれば、誤解を生み、イメージダウンにつながるかもしれない。だから、なにか思うことがあっても、何も言わない選手がほとんどだ。しかし、藤川はそれを覚悟の上、持論を語ったのだ。
最近、野球の現場に限らず、夜遅く、幼い子どもを連れて歩く保護者を目にすることがある。これは私も同じ親の立場として疑問に思う。今の社会が抱える大きな問題であるようにも思っていた。それだけに人気球団・阪神タイガースの誇る抑え投手という影響力のある立場の人物の一連の行動を頼もしく感じた。
そんな藤川に尊敬の念を抱いているのが成瀬善久投手(22)だ。チームメートになった北京五輪アジア予選期間中、ほとんどの時間を共にするほど、心酔していた。
「野球の考え、人生観、すべてがすごい。本当に勉強になることが多かった。日本代表の期間、あの人と共に出来たことは大きな収穫。あのような投手になりたいと思う」
藤川の話をするときの若き左腕の目はイキイキとしている。成瀬もまた、千葉ロッテマリーンズの人気選手であり、今後はその発言に影響力が出てくるに違いない。藤川という素晴らしい選手の影響を受けている成瀬には、あの日の藤川のように自分の考えをしっかりと持ち、社会を良い方向へと導く行動を取って欲しいと思う。
プロ野球選手にはその責任がある。
藤川やるなー。