マリーンの風 ファンサービスを率先
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「今日も、サイン会をしていいかな?」
あの時の言葉が頭から離れない。春季キャンプでは昨年に続き土、日には必ず主力選手を何人か呼んでサイン会を行うよう心がけてきた。キャンプ最初の土曜日となった2月4日、清水が率先してサイン会に参加。気温10度弱と寒い中、1時間近くペンを走らせた。
広報としてはエースにこれ以上、負担はかけられないと、翌日のサイン会のメンバーからは外していた。しかし、清水はこれが不満だった。
「遠くからオレを見に来てくれるファンがいるかもしれない。子供にとっては今日の思い出が一生残るかもしれない。だから、オレはサインをする。30分だけでもいいから開いてくれ」
エースの思いに応えないわけにはいかない。急きょ、サイン会のメンバーに清水を追加。ファンからは大歓声があがった。結局、清水は毎週土、日に行ったサイン会にチームで唯一、フル参加した。
こんなこともあった。その日は首脳陣から軽めの練習で終わるよう指示を受けていた。本来ならメーン球場で一通りの練習を行うとホテルに戻ってよいのだが、清水はあえて、走り込みのメニューを行うために使用するサブグラウンドに顔を出した。
「なんでランニングのメニューもないのに、そこに行くのかって? だって、オレがもうすぐここに来るだろうと思って待っているファンがいたら申し訳ないから。顔を出すだけだよ」
なるほどと、うなるしかない。これぞ、プロフェッショナル。エースは背中でチームを引っ張る。このような清水の姿勢は確実にチームに浸透しつつある。球団にとって、これほど頼もしく、ありがたい存在はない。
もう一つ、捕手・里崎智也のエピソードも紹介したい。彼はバレンタインチョコを女の子からもらい、それが何個目かを聞かれるたびに「これが初めてだよ。今年、初めてもらった」と言い続けていた。その理由は? 「だって、その方がプレゼントしてくれた人も喜ぶでしょう。10個目だよ、なんて答えるより、絶対にうれしいと思う」。この心がけもファンサービスの一つだと思う。
(千葉ロッテマリーンズチーム付き広報 梶原紀章)
ファンサービスは大事だよー。