ロッテ・バレンタイン監督 変革…大砲補強、俊介は新球
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ブルペンで渡辺俊の投球がワンバウンドし、捕手の後ろからネット越しに投球を見ていたバレンタイン監督の鼻先をかすめた。「あっ、すみません」。まだ球筋の定まらないボールは覚えたてのチェンジアップ。「何か新しいものを身につければ選手は成長する」。指揮官が習得を勧めたものだった。
下手投げのチェンジアップはあまり例がないが「相手がそれを意識してくれるだけでも結果は違ってくる」と渡辺俊。昨年5勝に終わった悔しさを晴らそうと、マスターに必死だ。
バレンタイン監督が“変革”を求めるのには理由がある。「もともとは変化を好まなかったが、考えを改めたんだ」
30代半ばで大リーグ、レンジャーズの監督に就任。熱血指導に明け暮れていたある日、主力選手の一人から意見された。「あなたは勝つことしか考えていない」。「お前は首だ!」と叫びそうになるのをこらえ、オフに2カ月かけて他の監督のスタイルや実業界の成功例などを研究した。
「試合結果にだけこだわってはだめ。試合前の練習や試合中にこそ学ぶべきことは多いと気付かされた」。それからは人の意見にも耳を傾けるようにし、指揮官として日米で結果を残した。
「実戦に勝る練習はないからね」と、今キャンプで韓国ロッテとの3連戦など練習試合を多く組んだのも変革の一つだ。
昨年のチーム打率・252はリーグ最下位。本塁打は里崎とベニーの17本が最高だった。迫力を欠いた打線に変革をもたらすと期待されるのは、ソフトバンクから移籍したズレータだ。
来日4年間の通算成績は打率・291、122本塁打、333打点。日本で活躍する背景には、相手投手の球種や攻め方を細かくつけたメモがある。今季からは、このメモにソフトバンク投手陣のデータも加わる。「ロッテの同僚に『見せてくれ』といわれればもちろんOK。手助けするよ」
バットだけでなく、頭を使って打線を引っ張る大砲は、指揮官にとって頼もしい限りだろう。
今年はV奪回。それしかあるまい。