“パ無敗男”ロッテ・成瀬が躍動!無四球完封でいざ札幌へ
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無敵左腕が投げ切った。ロッテの成瀬善久投手(21)が、ソフトバンク打線をシャットアウト。04年パ・リーグのプレーオフ導入以降、初となる無四球完封でチームを救った。今季パ・リーグの他球団相手に“不敗神話”を続ける男が、ポストシーズンでも旋風を巻き起こす。
3万0011大観衆が起こす地鳴りのような大歓声がマウンドに降り注ぐ。九回二死二塁。松中を三飛に仕留めた成瀬はポーンとグラブをたたいた。マウンドに駆け寄った今江に頭をなでられると、ナインの手荒い祝福攻め。最後はバレンタイン監督に抱きつかれ、笑顔が弾けた。
「九回のファンのコールでは鳥肌が立ちました。大事な試合でレギュラーシーズンでも1、2番のよい内容でした」
9回を5安打無失点。負ければCS敗退となる背水の陣で、最高の快投を見せた。武器は、ぎりぎりまで腕の出を遅らせたフォームから繰り出す伸びのある直球と、キレのあるチェンジアップ&スライダー。五回無死一塁で多村を遊ゴロ併殺に斬るなど、三塁を踏ませない投球で第2ステージ進出に貢献した。
パ・リーグで現行に近いプレーオフが始まった04年以降で、無四球完封は初めての快挙。プロ4年目の左腕は横浜高の先輩である“怪物”松坂をもしのぐ投球内容だったが「松坂さんが日本にいる前でしたかった」と、思わず本音も漏らした。
実は、成瀬には短期決戦で苦い記憶があった。忘れもしない昨秋のファーム日本選手権での阪神戦。先発したが、一回に3者連続本塁打を浴びるなど五回持たずにKO。二軍での日本一を逃し「一軍で5勝していて、甘くみていた部分があった」と一発勝負の厳しさを痛感した。それからは、より重心の低いフォームを保つため走り込みで下半身を徹底強化。今季の防御率&勝率の2冠は、あのKOによって生み出されたものだ。
「今年はシーズンでもよく投げられていたので、絶対きょうはいけると思った」。レギュラーシーズンからの自身の連勝は11に。第2ステージでの登板は第4戦以降となりそうだが、パ・リーグ相手に無敵の左腕が、札幌でも大暴れする予感がする。
■成瀬善久
(なるせ・よしひさ)1985(昭和60)年10月13日、栃木県生まれ、21歳。横浜高では3年春のセンバツで準優勝。04年ドラフト6巡目でロッテ入団。今季は24試合に登板、16勝1敗、防御率1.817で勝率、防御率の2冠。通算成績は37試合、21勝6敗0S、防御率2.32。1メートル80、75キロ。左投げ左打ち。独身。年俸1600万円。背番号60。
■データBOX
ロッテが第2ステージ(S)進出。先発の成瀬はクライマックスシリーズ(CS)初登板で無四球完封。04年のプレーオフ導入以降完封勝利を挙げたのは、06年第1S第1戦の西武・松坂(現レッドソックス)、同年第2S第2戦の日本ハム・八木に次ぐ3人目(八木も初登板)だが、無四球は初めて。成瀬はレギュラーシーズン16勝1敗で黒星は6月9日の横浜戦。今季パ・リーグ相手ではCSを含む15連勝。
■その時
成瀬の無四球完封勝利に師匠も喜んだ。神奈川県内の自宅で、テレビ観戦した横浜高野球部の小倉清一郎部長は「最初は硬くなっていたけど、制球がよく、打者の手元で直球がビュッと伸びていた」とたたえた。レッドソックス・松坂、西武・涌井も指導した同部長だが、高校時代の成瀬から今の活躍は想像できなかったという。「制球は2人よりよかったが、中継ぎで7、8勝すればいいと思っていたのに…。短期決戦が終わったら、本人に連絡したい」と声を弾ませた。
◆成瀬についてロッテ・井上投手コーチ
「とにかく自信を持って投げていた。頼もしい」
★上位打線粘って四球
上位打線が得点のおぜん立てをした。六回一死から西岡が四球で出塁し、すかさず盗塁を決めた。西岡は「四球で出て盗塁して、警戒させたのはいい仕事。打者に集中できなかったと思う」と胸を張った。続く早川はカウント2-0から粘って四球を選び、3番・福浦も四球。バレンタイン監督は「早川はボールをよく見極めた。福浦もフルカウントの難しい状況からよく選んだ」とたたえた。
★美酒はお預け
CS第2ステージ進出を決め、まるで優勝したかのように大量の紙ふぶきが舞った千葉マリン。しかし、日本ハムとの決戦を3日後に控えるだけに、ビールかけなど祝勝会はなく、選手らはすみやかに球場を後にした。日本ハムを破り、日本シリーズ進出を決めれば、札幌市内のホテルで祝勝会を計画しており、勝利の美酒は一時“お預け”となった。
■観客数は第1S最多
パ・リーグは10日、クライマックスシリーズ第1ステージ、ロッテ-ソフトバンクの3試合の総観客動員数が8万9432人だったと発表した。2004年から昨年までのプレーオフを含め、第1ステージの総観客数としては実数発表となった05年以降で最多。
★我らマリン党
◆小倉優子
クライマックスシリーズ第1ステージ突破、おめでとりんこです。
05年の春季キャンプに初めてお邪魔させていただいたとき、バレンタイン監督や選手の皆さんが優しく迎えてくださって、それ以来ロッテファンです。今シーズンもずっと、ずっと応援していたので、本当にうれしいです。優子にとって、今年1年の一番うれしい出来事で、ありがとうございます。第2ステージも、日本シリーズも勝ち進んで、もっともっとうれしい出来事、待っています。
◆山中正和さん(28)=千葉・船橋市在住、会社員
「成瀬がよくぞここまで育ってくれた。22歳の誕生日(13日)を前に21歳の集大成を見せてくれた」
◆小山内実希さん (20)=千葉・八千代市在住、会社員
「勝負強いサブローさんがやっぱり4番です。背番号『3』(のサブロー)は最高でした」
成瀬最高。言う事無し。