【注目選手の育ちと家柄】 唐川侑己(成田高・投手)
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●元銀行員の母とのなれそめ
正月は特に忙しい。 父・義明さん(52)は参拝客でにぎわう大本山成田山新勝寺・本堂課で働く。高校を卒業して35年、神職の資格はなく、賽銭(さいせん)の集計や、祭事の準備など事務一般が仕事だ。亡くなった父方の祖父・忠義さんも働いていたため、親子2代で成田山に勤めていることになる。義明さんがこう言う。
「通常の勤務時間は8時から16時ですけど、1月は忙しいので5時から19時になります」。現在、父方の祖母・春江さん(79)、義明さん、母・澄枝さん(50)、今春から小学校の講師になる短大2年の姉・明子さん(20)、中学2年の妹・依子さん(13)の5人とオスのシーズー犬・1匹が暮らす。澄枝さんがこう明かす。
「子供の字画を8画、3画にしています。唐川の名字と組み合わせると『努力すれば大成する』画数なんだそうです。ちなみに、犬の拉々(ララ)の名前も家族だから8画3画です」
夫婦の出会いは義明さんの職場だった。「高校卒業後、千葉銀行営業部に勤めていた私が、成田山の職員の方に営業に行ったのが出会いです。いくらだったでしょうか、そんなに多くはないけど、お父さんは快く定期預金してくれました。“お客さま”としてのイメージは良かったですけど、その時はまさか結婚するとは思いませんでした」(澄枝さん)
澄枝さんを一目で気に入った義明さんの電話攻勢が始まり、義明さん29歳、澄枝さん27歳の時に結婚した。 自宅はJR成田駅の近く。17年前に義明さんの実家を3階建ての4LDKに建て直した。
●小1から始めた空手は緑帯
唐川が野球を始めたのは小学3年。本人はサッカーをやりたかった。「でも、野球好きのお父さんが『ダメだ!』と一蹴(いっしゅう)。礼儀を学ばせるために、小学1年から空手をやらせ(緑帯)、小学3年の時に地元の少年野球チームに入れました」(澄枝さん)
中学ではシニアは選ばず、成田西中(軟式)野球部へ。「自分が小学生で肩、ひじを壊して野球を断念したこともあったから、体ができてない状態での硬式野球には反対でした」(義明さん) 。家では「ヨリちゃん」と呼ぶ妹の依子さんと仲がいいという。
「部活を引退して寮から戻って来ていた時は、帰って来るとすぐに『ヨリちゃんは?』と言っていた。侑己と依子は一緒に寝たりするぐらい仲がいいんです」(澄枝さん)。その依子さんがこう言う。
「学校では先生方などに『お兄ちゃんスゴいね』とあんまり言われるので、ちょっと嫌だなあと感じることもありました。でも私の性格を知ってるお兄ちゃんは、家では野球の話はあまりしないで、家族を笑わせてくれる。自慢のお兄ちゃんです」
去年のクリスマスには、妹が母にねだったiPodをプレゼントするため、資金援助。「自慢のお兄ちゃん」は今年のクリスマス、依子さんに何をプレゼントするのだろうか。
◆からかわ・ゆうき
1989年7月5日、千葉県成田市生まれの18歳。小3から野球を始め、中3で成田選抜のエースとして全国大会準優勝。成田高では1年夏からベンチ入り。2年春(2回戦敗退)と3年春(1回戦敗退)のセンバツに出場。3試合完投、1完封。最速148キロ。181センチ、75キロ。右投右打。家族は両親、祖母、姉、妹。契約金9000万円、年俸1000万円。
妹思いなんて、いいコじゃないか。