無敵18歳がダル超えた!ロッテ・唐川、デビュー3戦3連勝
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高卒ルーキーが、またも快挙を達成した。ロッテの高校生ドラフト1巡目、唐川侑己投手(18)=成田高出=が13日、日本ハム10回戦(東京ドーム)に先発し、8回4安打2失点で3勝目をマーク。高卒新人としては、1987年の近藤真一(中日)以来、史上3人目となる初登板からの3戦3勝で日本ハム・ダルビッシュ超えも成し遂げた。甘いマスクで人気沸騰中の唐川が、スター街道まっしぐらだ。
しなやかな腕の振り。きれいなフォームにポーカーフェース。高卒ルーキーとは思えない風格で、唐川がまたも快挙を達成した。
「前の2試合に比べると良い状態では投げられなかった。下半身をもう少し使いたかったけど、上体で投げていた」
こう言いながらも回を追うごとに、ストライクが先行。MAX145キロの直球にスライダー、チェンジアップがさえた。日本ハム相手に8回4安打2失点。高卒ルーキーとしては、87年の近藤真一(中日)以来、史上3人目となる初登板からの3戦3勝を飾った。
五回、稲葉にチェンジアップを右翼席に運ばれ、プロ初被弾した。だが、七回の対戦でも稲葉に対し、直球のサインに首を振り、あえてチェンジアップを投げた。結果的には右翼線二塁打を打たれたが、高卒新人らしからぬ勝負度胸も見せた。
度胸に加えて恵まれた体力が武器だ。適応力の高さは幼少時代に培われた。立花ヘッドコンディショニングコーチは「頭で理解して体に伝える能力が優れている。12歳くらいまでに、色んなスポーツを経験しないと身に付かない」と証言する。
唐川は千葉県の成田小時代、さまざまなスポーツを経験した。野球だけではなく、陸上のハードルやミニバスケットボールの選手として活躍。“ミニバス”では小学6年生の時、成田市の大会で優勝した。小学1年生から6年間、空手を習い、柔軟性を身につけた。特に、肩甲骨の可動域は広く、裏側に指がすっぽり入ってしまうほど柔軟な筋肉を持つ。
現代っ子には珍しく、あまりテレビゲームをしなかった。家を飛び出し、日が暮れるまで、友達と野山を駆け回った。こんな経験がプロに通じる体力の基になっていった。
次回の登板予定は、交流戦の開幕試合となる20日の巨人戦(千葉マリン)。「すごい打線だと思うので、1球1球自分のピッチングをするだけです」。バレンタイン監督の58歳の誕生日に白星もプレゼントした。平成生まれで唯一、プロで勝っている男がダルも超えた。今度はG打線に立ち向かう。
★唐川に聞く
――初登板から3連勝
「意識はしていませんでしたが、結果として勝ててうれしい。前の2試合に比べて調子はよくなかったが、二、三回くらいから修正できた」
――稲葉に初被弾したが
「いつかは打たれると思っていたので落ち込んだりというのはなかった。すごい打者に打たれたので逆に光栄です」
――日本ハム打線の印象は
「簡単に三振してこない。カットしたり、当ててきたりした」
――完投はしたかった
「調子が良かったらそういう気持ちもあったけど、七、八回から打たれてきたのが分かったので」
――バレンタイン監督の誕生日に白星をプレゼントできた
「何としても勝ちたいと思ったので勝ててよかった。良い誕生日を過ごしてもらえたんじゃないかなと思います」
――次は巨人戦での登板が濃厚だが
「すごい打線だと思うので、1球1球自分の投球をするだけです」
■データBOX
【1】ロッテの高卒新人・唐川が4月26日(ソフトバンク戦)の初登板初勝利から3連勝。ドラフト制後(66年以降)入団の高卒新人でデビューから3戦3勝は、78年阪急・三浦広之(4戦4勝)、87年中日・近藤真一(3戦3勝)に次いで21年ぶり3人目。三浦は2戦目が救援勝利で、デビューから先発のみの3戦3勝は近藤に次いで2人目。
【2】この日は8回を無四死球で、前回3日の西武戦から17イニング続けて与四死球なし。3試合通算でも24回1与四球で、「与四死球率(9イニングあたりの与四死球)」は0.38。規定投球回にはまだ達しないが、パ・リーグ規定以上トップの楽天・岩隈(1.36)よりはるかに良い。
■唐川・連勝デビューVTR
★圧巻デビュー 4月26日のソフトバンク戦(ヤフードーム)でプロ初登板初先発。7回を3安打5奪三振、三塁を踏ませない好投で平成生まれ初勝利を挙げた。お立ち台では「投げるからには勝ちたいと思っていたので、素直にうれしいです」と胸を張った
★地元で完投勝利 5月3日の西武戦(千葉マリン)で本拠地デビュー。首位西武の強力打線を相手に3安打1失点、無四球&10奪三振で完投勝利(10-1)。「地元での登板は気持ちよかったです」と満面の笑み
★誕生日3連勝!58歳ボビー大興奮
58歳の誕生日を白星で飾ったバレンタイン監督は、唐川の快投に大興奮だった。3試合で与四球1の制球力やマウンド上での落ち着きを激賞し「彼が勝利にさらなる喜びをつけ加えてくれた」とニッコリ。誕生日の試合は06年から3連勝となり、「時差の関係で誕生日は明日もあると思ってます」と連勝をおねだりしていた。
◆唐川とバッテリーを組んだロッテ・金沢
「球のキレはそこまでよくなかったが、ここぞというところでの制球力が素晴らしかった。きょうは真っすぐ中心の配球がうまくいったと思う」
◆2安打2打点のロッテ・オーティズ
「きょうは監督の誕生日。どうしても白星をプレゼントしたかったんだ」
◆2安打の日本ハム・稲葉
「変化球でストライクを取られて、その残像が残っているうちに真っすぐが来て差し込まれる」
◆七回に中飛に倒れた日本ハム・高橋
「思ったより速く感じた。真っすぐの質は(西武の)涌井みたい」
★その時
唐川の家族は、後援会関係者ら約20人と一塁側スタンドから声援を送った。11日に、息子と食事をした父・義明さん(52)は「ぶざまな試合をして傷ついてほしくないのが親心。冷や冷やドキドキしてました。うれしい限りです」と感無量だった。次回登板は巨人戦。成田小時代の恩師、中松睦浩さん(40)は「安心してみていられました。次は巨人ファンだからどうしようかな」と言いながらも、教え子の成長に目を細めていた。
★マリン党の声
◆山本マックスくん(9)=新宿区、小学生
「唐川くんのピッチングはすごすぎる! 早川選手も打てたし、バレンタイン監督の最高の誕生日になったと思う」
◆好田裕美さん(30)=四街道市、会社員
「唐川投手は成田高校の後輩。もともとロッテファンだったので、後輩の活躍がロッテで見られてうれしいです」
本当に唐川には無限の可能性を感じてしまう。