「MVPの会見ってこんなに派手なものだとは思いませんでした。廊下辺りで記者に囲まれてただ話をするだけかなって。だから前もってなにも考えずに会見に臨んでしまった。『受賞の喜びを誰に伝えたいですか?』という質問にはやっぱり両親ですと答えるべきだったかな」
久保はよく周囲から「ルーキーとは思えない」と言われる。それは彼が非常に頭が良く、冷静に物事を考えているからこそ言われるのである。MVP受賞後のこの感想からも、久保のそんな一面が見えるような気がした。
試合中にも黄金ルーキーに驚かされたことがある。7月4日の日本ハム戦(東京ドーム)。世間は日本ハム先発のダルビッシュ有投手とのルーキー対決に沸き、試合前から注目を集めていた。6回、2失点。両者に勝敗がつかず降板となった後のベンチで彼は私にこう話しかけてきた。
「知っています? 新庄さんって打席に入るときの音楽(BGM)が毎打席違うんですよ。やっぱりオシャレですね」
1点もやれない緊迫した展開だった試合で、この男は新庄の入場曲を聴く余裕があったのである。普通、投手はマウンドに上がれば、応援団のラッパの音さえ聞こえなくなるというのに、決して大音響でもないBGMが耳に入っており、それが毎打席違っているということまで気が付いていたというのだから恐れ入る。
もちろん、たゆまぬ努力も忘れない。降板後はベンチでひたすら投手の配球を観察していた。「この状況から考えると次の球はチェンジアップしかないだろうなあ。真ん中低めに落としてくるに違いない」などと先輩投手の配球をこまめに観察し貪欲(どん・よく)に研究をしていた。
現在のところ、新人王候補一番手と言われている。この新人離れしたロッテのルーキーが一生に一度しか手に入れることが出来ないそのタイトルを獲得することを私は信じて疑わない。
(千葉ロッテマリーンズ広報担当 梶原紀章)
ソニックかっこいいよねー。